CROSS TALK
なぜ産学研を貫くのか

なぜ産学研を貫くのか

eDCグループの産学研協同の一角を担うSCC。
産学研協同とは何か、どのような目的を持ち、何を目指しているのか。
eDCグループの役員3名が、産学研協同の本質について語り合う。

MEMBER

電子開発学園
常務理事 上原 利数
1981年にeDCグループ入社。1984年に宇宙技術開発に移り、リモートセンシング技術を手がける。2006年にSCCでeラーニングシステムの開発に携わった後、2015年に電子開発学園(EDC)へ。2018年より現職。
株式会社SCC
代表取締役社長 春日 邦彦
1979年にeDCグループ入社。1995年にSCCのシステム開発事業部第1システム部・部長を任される。その後2002年に関西支店・支店長を務め、2006年に取締役となる。2023年より現職。
宇宙技術開発株式会社
常務取締役 小野 繁
1978年にeDCグループ入社。ロケット飛行安全業務を担当した後、1987年に宇宙技術開発株式会社(SED)に転籍する。システム技術本部、輸送システム部、情報セキュリティ管理室での業務を経て管理本部へ異動。2018年より現職。

THEME1

産学研協同の根底にある
“教育”と“人づくり”

春日
eDCグループの基礎をつくったのは、SCCの初代社長・松尾三郎です。かつて逓信省(現・総務省の前身である郵便・通信を管轄していた中央官庁)や電電公社(現・NTT)でマイクロウェーブの研究をしていました。その後、日本電波塔(株)で東京タワー建設の技術部長を務めた1960年代、コンピュータの先進性、重要性を見抜き、ソフトウェア会社を設立。それがSCCの前身です。
上原
ソフトウェア会社設立とともに、松尾は、社会の変革を成功裡に実現させる要は、その社会に対応した教育であると考え、日本でコンピュータの商用利用が始まり情報化社会の到来を感じて、情報処理技術者の育成の必要性と重要性の想いを強くしました。コンピュータを扱い、情報化社会で活躍する人材を育成しなければならない。同じ危機感を持った地方自治体の首長が、松尾に要請して地元に情報技術の専門学校を誘致。全国各地に「電子計算機専門学校」を設立し電子開発学園(以下、学園)が誕生しました。その後1989年には北海道情報大学も開学しています。
小野
これもほぼ同タイミングですが、松尾が逓信省に務めていた関係で、宇宙開発事業団(NASDA 現・宇宙航空研究開発機構[JAXA])が発足するときに宇宙開発関係者から相談を受けました。外国製の飛行安全システム(ロケットが計画軌道を外れたときに指令破壊させるシステム)の日本版を開発できないか、と。そこで日本版へのソフトウェアの移植と、ハードの保守を手がけることにより、現在の宇宙技術開発(以下、SED)があります。
春日
eDCグループの根底にあるのは“教育”、そして情報化社会における“人づくり”。社会インフラである情報技術により、豊かな高度情報化社会を実現させるためには、情報技術のシステム実現、教育、研究――つまり《産学研の協同》がシナジー効果を発揮する必要があると考えています。そして、その使命を担っているのがeDCグループですね。
上原
学園の教育理念でも、このように掲げています。「IT人材育成に関する国策の推進役を担うとともに、企業が求める実践的なIT人材を育成することにより、情報化社会の進展に寄与する」――と。
小野
eDCグループでは協調性や倫理観など人間性を磨くことも重視しています。SEDではロケットの打上げも、衛星監視も、すべてチームで運営しますから、協調性や倫理観は欠かせません。そこで磨かれたエンジニア一人ひとりの人間性は、取引先からも厚い信頼を得ています。
春日
こういった人材を数多く輩出し、社会貢献していくことがeDCグループの存在意義と言えるのではないでしょうか。

THEME2

eDCグループならではの
多彩なキャリアパス

上原
eDCグループ内では「システム開発」「宇宙開発・利用」「IT教育」「研究開発」と様々な部門があり、それぞれが協同しています。だからこそ、本人のスキルや志向に合わせてキャリアに多彩な選択肢が生まれるのです。
春日
そうですね。例えば、SCCで4~5年のシステム開発経験を経て、学園の講師となったエンジニア。顧客の要望とはどのようなものか、最先端のプログラミング言語をビジネスにどう活かすのか、どのようなシステム開発手法が主流か…など、現場での経験を踏まえたリアルな情報を学生に伝えることができます。中にはSCCから北海道情報大学の教授になったエンジニアもいますね。
上原
エンジニア出身者の講義内容は、開発現場の知見が入った実践的な教育になり、確実に学園における教育のクオリティを上げています。そして、このような教育環境で育った学生の一部は、eDCグループに就職していきます。また、特別授業ではSEDのエンジニアも講師として来てくれますね。
小野
先日は、ITと宇宙開発について、現役のエンジニアが講演を行いました。ロケットの打上げから人工衛星の運用まで、様々な領域にITが使われているという内容で、だいぶ好評だったようです。
上原
こういう現役のエンジニアとの交流によって、目標が見つかる学生も多いのです。今自分が学んでいることは、「将来こういう社会貢献につながるんだ!」ということがわかり、情報技術の習得や資格取得を目指す上で大きなモチベーションとなっています。そしてSEDを就職先として選ぶ学生も増えてきました。
小野
SEDの社員550名のうち、学園出身者は3割強を占めています。
春日
SCCにも、もともと宇宙に興味を持っているエンジニアもいますから。実は私自身、大昔に(笑)就職活動をしていた頃、SCCの新卒採用記事にロケットの写真が載っているのを見て、SCCを選んだのです。「これはグループ内に相当な技術を蓄えている会社だろう」と思いまして。
上原
私も最初はSEDでリモートセンシングデータの解析・教育利用に携わり、次にSCCで出版や教育システムの開発、そして現在は学園と、教育を核にキャリアを積んできました。
小野
私は入社以来ずっと宇宙分野におけるソフトウェア開発業務に携わってきましたが、その私から見ても、SCCのソフトウェア開発技術はすばらしい。SCCの技術協力を得てプロジェクトを実施できる。現場のエンジニアにとっては、大きな武器です。
春日
これらはすべて、eDCグループだからこそ生み出せる多彩なキャリアパスと言えますね。

THEME3

「Society5.0」の実現に向けた
eDCグループの新たな挑戦

春日
産学研協同によって、人材交流・キャリアパス形成以外にも様々な成果を生み出しています。例えば、SEDのリモート技術をもとに北海道情報技術研究所が開発した衛星回線を使用した双方向の授業ができる商用サービスPINE-NET。これは遠隔教育システムで、現在は高速インターネット回線を使用したハイビジョン放送のPINE-NET IIへと発展しています。
上原
また、「宇宙とIT」の普及に向けて10年前から学園各校で、JAXAの協力を得て「宇宙展」を開催しています。小学生から一般社会人まで、参加者はのべ5万人。小学生のときに「宇宙展」を観に行って学園に入学してきた、という学生も出てきました。
春日
このような商用サービスの発信、普及活動などを通して、情報技術を社会インフラとした「Society5.0」(超スマート社会)の実現に貢献していきたいですね。
上原
実現に向けては「Society5.0」に対応した新しい教育も必要です。eDCグループとしても、SCCのAI経験者を学園の講師に登用し、2019年度から学園で本格的なAI人材の育成を行っています。
春日
「Society5.0」はきっとまったく新しい社会になるはずです。これまでの実績を活かしながらも、eDCグループとして新たな課題に取り組むつもりでいかなければなりません。
小野
宇宙・情報・教育という分野にまたがり、高い公共性を保ちながら産学研協同を行うグループは他にないと思います。この独自性を「Society5.0」の実現に活かしていきたいですね。
上原
学園の卒業生は9万人。SCCやSEDなどグループ内に就職した卒業生もいますが、多くは日本全国の企業へと巣立っていき、現在IT分野の様々なポジションで活躍しています。
春日
SCCやSEDのエンジニアが学園の講師となり、次の時代の人材を育てていく。そして卒業した学生たちが、一人の情報技術者として新しい社会をつくっていく。この循環こそが私たちeDCグループにおける産学研協同の意義なのです。